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2019.07.01 記憶術
北米で生き残ろうと思うと、常に自分を高めようと努力し続けなければならないことはここで何度も書いてきました。
僕がアメリカで外科を目指そうという思いを確定的にしたのがK先生でしたが、先生もよく言っていました。日本ではなあなあでもなんとかやって行けるが、アメリカではそれじゃあ生き残れないと。

もちろん日本で信じられないような努力を続けている人もたくさんいますから、前半は必ずしも普遍的ではないですが、後半部分はその通りだと思います。

小児外科フェローシップに入るため、フェローシップが決定した後はそれを成功させるために、どうすればいいかを考えて、色々な角度から何か準備できることはないかと考えました。論文を書くことや小児外科の本を読むことは当然ですが、他に思いついた一つが、記憶力をもっと高めようというものでした。

前々から僕は、患者さんの名前をパッと出されて、その人に関する情報をリンクさせて思い出す能力に、他の北米人と比べて劣っていると感じていました。ここは何とか改善したほうがいいと。

それで記憶に関する本を何冊か読んでみました。全く見当違いであまり意味のない努力だったかもしれないし、これで学んだことが日常の診療にどれほど役に立っているかも未知数ですが、この学び自体が普通に面白かった。特にこの本はコンパクトで目から鱗でした。



病院内でこの記憶術を応用している例としては、
1、患者さんの名前と部屋番号
2、スタッフの顔と名前
3、院内の内線電話番号
4、院内至る所にある番号式の鍵

日常生活では、
1、買い物リスト
2、クレジットカードの番号
3、道順

などです。先日、モントリオール小児病院の小児外科フェローシップの修了のパーティーに呼ばれて行きました。会場はモントリオールのダウンタウンで、その時は自転車で行っていました。慣れない場所なので、帰りにGoogle Mapを使って帰ろうと思いましたが、携帯の電池がほぼないことに気が付き、急いで約15ステップからなる道順をGoogle Mapで覚えました。まもなく携帯は死亡しました。

記憶に使った方法はまさに上記のRon Whiteの本に書いてある通りです。基本にあるのは「人間は言葉より絵を遥かによく覚えられる」ということです。昔からある手法なので知っている人も多いかもしれません。簡単に紹介します。

まず、自分の家の部屋が5つあるとして、各部屋にある家具を5つずつ、時計回りなどの順番を付けて覚える。例えば1、ソファ→2、テーブル→3、テレビ→4、鏡台→5、押し入れ、と行った風に。これを普段から準備しておくことによって、5x5=25個までは何でも暗記することができる。(まだ何のことか分からないですね。)

次に、覚えたいものを頭の中で順番にそれらの家具に置いていく。抽象的な言葉であればこじつけでもいいので絵にして家具に置く。最初の曲がり角が例えばMcDonald Streetだとしたら、マクドナルドのピエロみたいなおじさんがソファでおどけているところを描く。

この要領で15ステップ全ての曲がり角を絵にして家具に置いていく。あとは、自分の家の家具を頭の中で辿っていくだけです。

右折、左折はどう覚えるか?
右折Right turnはRain、左折Left turnはLambです。McDonald Streetで左折だとしたら、ソファの上で羊にまたがったマクドナルドおじさんです。

参考までに他に読んだ本を。上のRon Whiteが一番良かったですが他のも読むと理解が深まるかと。

これもコンセプトはRon Whiteと同じ。



これも似ている。



これは読み物としてすごく人気がある。エッセンスをさっさと身に付けたい人には少し長い。



これが上のMoonwalking...の和訳らしい。読んではいません。













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2019.06.30 GSW
カナダはアメリカと比べて平和な印象があると思いますが、確かに外傷においても銃創や刺創を見ることはほとんどありません。トロントでの銃創を時々ニュースで見る程度です。

そんなわけで、モントリオールの医療者も銃創の経験には著しく乏しいです。ERも一般的にできる人が多く働きやすいですが、銃創に関してはやはり経験が少ないです。この状況である日自殺企図でエアガンを腹部に撃った患者さんが運ばれ、パニックに陥ったERの医師からコンサルトの依頼がありました。バイタルは完全に正常で腹部圧痛は軽度。どうしていいかわからず、腹部の銃創という時点で即手術だと思っていたこのERのベテラン医師は、他の緊急患者を診ていた僕がやっと到着すると狼狽えて半ギレ状態。ブランクがあるとは言え、一応僕はアメリカで外科レジデンシーをしかもShock Trauma Centerでやっているので、あまり動じることはありません。外傷をしている当時は毎日のように銃創を診ていました。結局小切開による開腹手術となり事なきを得ました。こういう症例はカナダでは希少です。同時に銃創に関してはアメリカのようにみんなが扱いに慣れていると仮定してしまってはいけない事を知りました。
2019.06.19 ディベート
長い小児外科フェローシップは続きます。でもすでに折り返し地点!あと1年で独り立ちするという焦りがあります。そしてその焦りが北米のフェロー達を成長させることに疑いはありません。日本の研修は小児外科医のいる病院の乱立(集約化されていない)ことと、トレイニーの数が制限されていないこともあり経験症例数が北米と比べて著しく少ないことは既に日本でも議論されているようですが、それと関連して研修の年数がはっきり定義されていない(できない)ことにより、症例の「時間的な集約化」がされていないということも忘れてはなりません。それによって、上記のような「焦り」による成長のメカニズムは皆無と言っていいと思います。

とは言え、事情を完全に把握していない部外者である僕がそれに一石を投じる立場でも時期でもなく、一石を投じるなら相当のストラテジーと覚悟が必要です。今は小児外科医としての研鑽の時期です。

さて、フェローシップの行事の一環で、年に3回他のフェローシッププログラムとのジョイントカンファレンスがあります。フェローが一人ずつ症例を提示して次のマネージメントを他のフェロー達にクイズしていくというもので、言わばpimping sessionです。オタワとモントリオール小児病院(MCH)と我々の病院の間で持ち回りで年に3回行われ、今回はMCHでした。

MCHでは、上記pimping sessionに加え、ディベートがあります。今回のテーマは、「鼠径・臍ヘルニアの時の超音波下でのブロック麻酔の是非」というもので、僕もco-fellowのシャーザッドも「何でそんなテーマを。。。」という反応で一致しました。でも、決められたものなのでやらない選択肢はありません。

僕が北米人にどうあがいても勝てないと思うことがいくつかあるとすれば、ディベートは明らかにその一つです。幸いこのジョイントカンファはフランス語を使わなくていいのですが(フランス語だとしたら多分休暇を取ります。真剣に。)、英語でも、ひいては日本語でもディベートはきつい。というか、一回もやったことがないのです。

僕もシャーザッドも重い腰をやっと上げ3日前にブロック麻酔反対派としてcounterargumentsをまとめていきました。3日で手術の合間にやった割には、我ながら結構良い議論の組み立てができ、本番のプレゼンもまずまずでした。シャーザッドに至っては子供の頃にディベートで賞を取ったことがあるということもあり会心の出来でした。二人ともTeam Sainte-Justineの勝利を半ば確信し、僕は相手への慰めの言葉を考え始めていたのですが、結果は敗北でした!軽くショックだし納得いかないのですが、仕方ありません。僕のディベート成績は0勝1敗です。

来年は本当に休みを取ろうかな。








2019.05.27 APSA & JSPS
先週はAmerican Pediatric Surgical Association (APSA) のためボストン、そしてその足で日本小児外科学会学術集会に参加するためちょっと日本に帰ってきています。どちらも実は初参加。今後のヒントとやる気をもらえました。

APSAはTED talk的なレクチャーがたくさんあり、参加型のシンポジウム・パネルディスカッションも多かったです。外傷とHirschsprungのは特に良かった。Multiple choiceでオーディエンスに「あなたならどうする?」をリモコンで答えさせる問題が随所に織り込まれていて、自分の考えが他のアメリカ人・カナダ人と比べてどうなのかを知ることができました。アメリカ・カナダでフェローをやっている人達は、面接で何度もあっている人が多いので大抵が知り合いです。彼らとの近況報告も有意義でした。アメリカのフェロー達にここまでの経験執刀症例数を聞くと、ここまで10ヶ月で少ない人でも600、多い人なら850例と言われちょっと焦りました。僕もco-fellowのShahrzadも今のところ350例くらいです。アメリカのフェロー達の症例にはappendectomyが150例とか含まれていることもあるので、index caseを取ってみればそれほどの格差はないのかもしれません(当院では虫垂炎はアテンディングのみでやってしまうこともある。2歳未満のもの以外は特段これ以上経験する必要性を感じてはいないのでそれはそれでよし)。それでも、残りの14ヶ月で今まで以上にアグレッシブに手術経験を積んでいこうと心を新たにしました。

日本小児外科学会は別の意味で有意義でした。日本の小児外科医の先生方と知り合いになって生の声を聞くことで、日本の現状、問題点とその根深さを知ることができました。

そして飲み会。北米ではこういうのはほとんどないので素晴らしい。日本の小児外科医の先生達と。みなさん勝手に掲載してすみません。清水先生は南アフリカとシドニーで小児外科をされた異色の経歴。矢田先生は今オハイオでBariatric/Robotic surgery fellow。
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二次会は午前3時まで。当然二次会三次会文化も北米になく、懐かしい。
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僕の経歴は珍しいので、こういう場に行くとチヤホヤしてもらうことも多く、それは素直に嬉しいです。Dale Carnegieの本 "How to Win Friends and Influence People" にもありました。人は誰も「特別」と思われたい。

How to win friends(洋書)


How to win friends(和書)


だけど、難関フェローシップに入ったことで満足していたら、難関医学部に合格して勉強しなくなってしまう学生と同レベルということも十分承知しています。アカデミックなところで小児外科界にインパクトを与える仕事をしたい。それがどういう形でできるかを模索していきます。

フェローシップは毎日大変ですが、忙しさにかまけてこの環境が小児外科医としていかに恵まれているかを忘れがちです。帰ったらまたがんばろう。2週間留守を守ってくれている妻に感謝。


Swine fluが話題になった10年前、アメリカで働いていた日本人の先生とその話になったのですが、その時に先生がswineを「スウィン」と言い続け、気になって仕方がありませんでした。7、8回「スウィン」と言ったあたりで流石に指摘しようかと思いましたが、大した間違いでもないのでやめておきました。

話題になっていたのですから、間違いなくニュースや病院内で他の人がswine fluを発音するのを何十回以上聞いているはずです。一度でも「スウィン」と発音するのを聞いたことがあるか?ないはずです。それでも、自分の中で「スウィン」だと思ってしまうのは何故でしょうか?

要は、聞こえていないのだと思います。聞こえていない。

Swine前後の他の言葉も理解するのがやっとで、swineをどう発音するかまで気が回らない。あるいは、とりあえず自分の中で「スウィン」と発音することで解決しているから、他の人が違う発音をしていても、もう入ってきていない。

何十年とアメリカに住んでも英語を全く理解しない中国人やメキシコ人の人達を見てきましたが、彼らが自分たちのコミュニティだけで自分たちの言語のみで十分生活できるという事実以外にも、上記の要因が少なからずあるように思います。


昨日と今日はJournée Scientifiqueと言って、モントリオール大学関連施設の外科系レジデント・フェロー・医学生が各々の研究を各6分の持ち時間で発表しました。僕もたどたどしいフランス語で肺分画症の手術症例を発表。質問も何とか答えます。

フランス語ネイティブの医学生・レジデントの発表を聞いていて、医学的なことのみならずフランス語表現をいろいろ学びました。中には、1年間よくその表現知らずに生きていけたなと思うようなものもありました。

でも、1年間その表現を聞いたことがなかったということはありえません。僕に聞こえていなかっただけなのです。

その証拠に、一度表現を認識すると、次にその表現を聞いたときは必ず認識し、その表現は案外頻繁に使われていた事に気付くという事はよくあるのです。

初めに遭遇した時にしっかり「気付く」ことが大事。言語だけではなく日常の診療でも全く同じことが言えます。